前回の記事では、卵子の周囲に存在する「顆粒膜細胞(かりゅうまくさいぼう)」が、卵子へ栄養を届ける重要な存在であることについてお話しました。
今回はさらに一歩踏み込み、
・顆粒膜細胞とは何をしている細胞なのか</li>
・FSH(卵胞刺激ホルモン)とどう関係しているのか
・なぜ卵胞発育に重要なのか
について、妊活と関係する部分を中心に解説していきます。
卵子は“単独”で育っているわけではない
「卵子の質」と聞くと、多くの人は“卵子そのもの”をイメージします。
しかし実際には、卵子は1つだけで育っているわけではありません。
卵子の周囲には、
・顆粒膜細胞
・卵胞膜細胞
などの細胞が存在し、卵胞という“チーム”の中で育っています。
特に重要なのが、卵子を取り囲む「顆粒膜細胞」です。
卵子そのものには、十分に栄養を取り込む力がありません。
そのため、顆粒膜細胞が血液から受け取った酸素や栄養を卵子へ届けています。
つまり、顆粒膜細胞は卵子にとっての「専属サポーター」のような存在なのです。
顆粒膜細胞は“栄養運搬”だけではない
顆粒膜細胞の役割は、単に栄養を運ぶだけではありません。
妊活に関係する重要な働きとして、
・卵子へ栄養を届ける
・卵胞ホルモン(エストロゲン)を産生する
・卵胞の成長をサポートする
・卵子へ成長シグナルを送る</li>
・卵胞内の環境を整える
などがあります。
現在の生殖医学では、
「卵子の質=卵子単独の問題」
ではなく、
「卵子を取り巻く環境も非常に重要」
と考えられています。
つまり、顆粒膜細胞の働きが弱ると、卵子にも影響が出やすくなるということです。
FSH(卵胞刺激ホルモン)と顆粒膜細胞の関係
妊活をしていると、「FSH」という言葉を聞くことがあります。
FSHは、脳下垂体から分泌される「卵胞刺激ホルモン」です。
このFSHは、顆粒膜細胞に存在する“FSH受容体”へ結合することで働きます。
すると、
・顆粒膜細胞が増殖する
・卵胞が大きくなる
・エストロゲン産生が増える
・卵子成熟が進む
という流れが起こります。
FSH
↓
顆粒膜細胞を刺激
↓
卵胞が育つ
↓
卵子が成熟へ向かう
つまり、FSHは直接卵子を育てているというより、
「顆粒膜細胞を介して卵胞を育てている」
とも言えます。

顆粒膜細胞が弱るとどうなる?
顆粒膜細胞の働きが低下すると、
・卵胞が育ちにくい
・未熟卵が増える
・エストロゲンが上がりにくい
・採卵数が少なくなる
・卵巣反応が低下する
などにつながる可能性があります。
また、近年では、
・酸化ストレス
・慢性的な血流低下
・冷え
・睡眠不足
・過度な炎症
なども、顆粒膜細胞へ影響すると考えられています。
理研の研究でも注目されている「顆粒膜細胞」
理化学研究所(理研)の研究では、顆粒膜細胞の働きに関係する「Wntシグナル」が正常に働かないと、
・卵胞が十分に成長できない
・卵巣が小さいままになる
・卵子の成熟が進みにくい
ことが示され、
「顆粒膜細胞の働きが、卵胞発育の鍵を握っている」
ということが注目されているのです。
鍼灸や漢方で何ができる?
当院では、
「卵子を育てる環境を整える」
という視点を大切にしています。
その中でも、
・卵巣周囲の血流
・冷え
・栄養状態
・睡眠
・慢性的な疲労
などは、妊活において非常に重要だと考えています。
鍼灸では血流や自律神経へアプローチし、
漢方では身体の土台となるエネルギーや栄養状態を整えていく。
その積み重ねが、結果として卵胞環境を整えることにつながると考えています。
参考記事
理化学研究所|卵巣の発達を制御する新たな仕組みを発見
FSHと卵胞発育に関する論文